Ex-Sガンダムは誰が乗る前に立ってしまう ヤサカ・マオ起用で模型の記憶が動いた

Ex-Sガンダムは誰が乗る前に立ってしまう ヤサカ・マオ起用で模型の記憶が動いた

Ex-Sガンダム、出た瞬間にもう強い。

いや、性能の話ではない。
もちろんゲーム内性能も大事です。
でもその前に、画面に置かれた時点で強い。

あの長いビーム・スマートガン。
背中の塊。
青と白の面。
変形しそうで、もう変形しなくても十分すぎる圧。

情報量の暴力。

ただし、雑に盛った暴力ではない。
ちゃんと立っている。
重いのに、輪郭が読める。
過剰なのに、まとまっている。

ここがEx-Sガンダムの怖いところです。

物語を知らなくても、まず形が刺さる。
でも物語を知ると、今度は形だけでは済まなくなる。
リョウ・ルーツ。
A.L.I.C.E.。
ガンダム・センチネル。
模型誌。
ガンプラ。

名前を出しただけで、棚の奥からいろいろ落ちてくる。
やめて。
いや、落ちてきてください。

Ex-Sガンダム:
『ガンダム・センチネル』に登場するSガンダムの強化装備形態
ビーム・スマートガン、インコム、リフレクター・インコムなどを備える機体
Sガンダムと同じくA.L.I.C.E.の文脈を持つ
プラモデルや完成品、ゲーム参戦で記憶されやすい機体

ヤサカ・マオなのか、そこで一回止まる

今回引っかかるのは、Ex-Sガンダムそのものだけではない。

ヤサカ・マオ。

ここで一回、手が止まる。

『SDガンダム ジージェネレーション エターナル』で、UR「Ex-Sガンダム(EX)」とUR「ヤサカ・マオ」が並んだ。
同じ告知には、UR「ガンダム・ファラクト(Season2仕様)(EX)」とUR「エラン・ケレス(強化人士5号)」もいる。

ファラクトとエランは、かなり素直に読める。
劇中の関係がそのまま来る。
ああ、そこね。
わかる。

でもEx-Sとヤサカ・マオは、そこまで一直線ではない。

だから止まる。
止まったあと、頭の中で別の回路が動き始める。

リョウ・ルーツではない。
でも完全に無関係でもない。
操縦者ではなく、作る側の人間が来ている。

ここが今回の面白さです。

ヤサカ・マオ:
『ガンダムビルドファイターズ』に登場するガンプラビルダー
代表機はガンダムX魔王、クロスボーンガンダム魔王など
第17話「心の形」ではセイ、レイジとの対戦が描かれる
センチネル原作のパイロットではない

これは代役の話だけではない

もちろん、リョウ・ルーツがいないことに引っかかる気持ちはわかる。

Ex-Sガンダムを『ガンダム・センチネル』として受け取っている人にとって、リョウ・ルーツとA.L.I.C.E.はかなり大きい。
機体だけ出ればそれでいい、とは言い切れない。

そこを雑に「まあ別にいいじゃん」で流すのは違う。

ただ、今回のヤサカ・マオ起用を、単なる代役の賛否だけで見るのも少し浅い。

ヤサカ・マオは、乗る人というより、作る人です。
ガンプラを組み、改造し、戦わせる側の人。
つまり、Ex-Sを「物語の機体」としてだけではなく、「作例として見てしまう機体」として受け取る入口になる。

これが効いている。

Ex-Sガンダムは、そもそも形の記憶が異常に強い。
テレビアニメの名場面より先に、箱絵、完成見本、作例写真、ゲームの立ち絵で刺さっている人がかなりいる機体です。

そこへ、ガンプラビルダーのヤサカ・マオが来る。

ずるい。

リョウ・ルーツ不在の痛みを消す配置ではない。
でも、Ex-Sの別の入口を強く開ける配置ではある。

Ex-Sは「立体先行」の機体である

Ex-Sガンダムの魅力は、動く前から成立してしまうところにある。

本体よりも長く感じるビーム・スマートガン。
背面に盛られた推進器と装備。
白と青の面の切り返し。
胸から脚まで、重いのに破綻しないバランス。

説明を読む前に、目が理解する。

普通なら、ここまで盛ると鈍くなる。
ただの全部乗せになる。
でもEx-Sは、重いまま美しい。

この機体、加減を知らない。
それなのに、完成度だけ妙に高い。

ガンダム・センチネル:
模型誌『モデルグラフィックス』で展開された企画・小説・フォトストーリー
映像作品ではなく、模型、設定、作例の文脈が強い作品
Sガンダム、Ex-Sガンダム、FAZZなどが知られる
カトキハジメのデザイン文脈とも結びつきが深い

ここで『ガンダム・センチネル』の出自が効いてくる。

Ex-Sは、テレビシリーズの毎週の名場面から入る機体ではない。
模型誌、設定画、作例、立体物。
そういう入口が強い。

だから、機体の人気が「誰が乗って何をしたか」だけに閉じない。

作りたい。
飾りたい。
眺めたい。
変形機構を知りたい。
この装備の意味を読みたい。

そういう欲が先に立つ。

操縦席より先に、展示台が見える。
戦場より先に、模型棚が見える。

これがEx-Sガンダムです。

A.L.I.C.E.がいるから、ただの置物にもならない

ただし、Ex-Sを「形だけで勝つ機体」と言い切ると、それも違う。

A.L.I.C.E.がいる。

ここが厄介です。

A.L.I.C.E.:
Sガンダム系に搭載された教育型コンピュータ
機体を単なる兵器ではなく、内部にもうひとつの判断主体を持つ存在として見せる要素
Ex-Sガンダムの語りで外しにくい中核

Ex-Sは立体だけで立つ。
でも、ただのかっこいい置物ではない。

中にA.L.I.C.E.がいる。

人が乗る。
機体が判断する。
システムが育つ。
兵器なのに、どこか人間くさい。

このねじれがあるから、Ex-Sは本当に面倒くさい。
褒めています。

機体だけで成立してしまう。
でも、物語を外すと寂しい。
リョウ・ルーツ不在に引っかかる。
でも、ヤサカ・マオの「作る側」からの接続も妙にわかる。

全部が同じ場所でぶつかっている。

だから今回の告知は、ただ「変な組み合わせが来た」では終わらない。
Ex-Sという機体が持っている複数の入口を、一気に開けてしまった。

ファラクトとエランが隣にいたから、ズレが見えた

同じ告知にファラクトとエランがいたことも大きい。

あちらは劇中の線が太い。
機体とパイロットの関係が、作品の記憶と直結している。
だから、見た瞬間に納得しやすい。

その隣に、Ex-Sとヤサカ・マオ。

劇中線ではなく、模型線。
操縦ではなく、制作。
原作再現ではなく、シリーズ記憶の接続。

この並び、かなりGジェネらしい。

Gジェネは、原作をそのまま並べるだけの場所ではない。
作品同士を横につなぐ。
機体とキャラを別の角度から出会わせる。
そういう編集の場でもある。

今回、その編集感がEx-S側で露骨に見えた。

ファラクトとエランが「劇中の正しさ」を見せる。
Ex-Sとヤサカ・マオが「模型の記憶」を見せる。

同じガシャ告知の中で、接続の種類が違う。

ここがかなりおいしい。

喜びとしこりが同時にある

この件、きれいに片づけなくていいと思っている。

Ex-Sが来てうれしい。
ヤサカ・マオなのが面白い。
でもリョウ・ルーツではないことに引っかかる。
A.L.I.C.E.まで含めて考えると、もっと引っかかる。

その混ざり方が、むしろ正しい。

Ex-Sガンダムは、入口がひとつではない機体です。
センチネルの物語から入った人。
プラモデルから入った人。
完成品から入った人。
ゲームで初めて触った人。
カトキデザインの線から刺された人。

同じEx-Sを見ていても、見ている中心が少しずつ違う。

だから今回の反応が割れるのは、むしろ自然です。
割れるだけの厚みがある。

薄い機体なら、ここまで揉めない。
厚いから揉める。
好きの入口が多いから、引っかかる場所も多い。

そこまで含めて、Ex-Sガンダムは面倒で、良い。

Ex-Sは、誰が乗る前に立ってしまう

今回いちばん残ったのは、やっぱりそこです。

Ex-Sガンダムは、誰が乗るかより先に立ってしまう。

でも、誰が乗るかがどうでもいいわけではない。

この順番が厄介。

形が先に来る。
模型の記憶が先に来る。
立体物としての圧が先に来る。

そのあとで、リョウ・ルーツやA.L.I.C.E.が追いついてくる。
さらに今回は、ヤサカ・マオという「作る側」の記憶まで入ってきた。

情報が多い。
でも、散らからない。
全部あの青白い輪郭に吸い込まれていく。

Ex-Sガンダムは、物語の前に立体でこちらを殴る。
それから物語で逃げ道を塞ぐ。

そんな機体、強いに決まっている。

今回のヤサカ・マオ起用は、その強さを少し変な角度から照らした。
リョウ・ルーツ不在の寂しさは残る。
でも、模型としてのEx-Sの記憶もまた動いた。

立体が先に来る。
物語があとから追いつく。

Ex-Sガンダムは、その順番のまま今も強い。

参考ソース

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