「共犯」が耳元まで来る。にじさんじ「共犯ボイス」試聴動画(魁星編&渡会雲雀編)

「共犯」が耳元まで来る。にじさんじ「共犯ボイス」試聴動画(魁星編&渡会雲雀編)

「共犯」って、こんなに手触りのある言葉だったっけ。

もっと観念の側にある言葉だと思っていた。物語の中で使われる、少し危ない響きのラベル。誰かと秘密を持つとか、同じ穴のむじなになるとか、そういう湿度のある関係性をまとめて呼ぶための言葉。

でも、にじさんじの「共犯ボイス」試聴動画を聴いていると、その言葉がやけに近い。

近い、というより、置かれる。

耳元に。

机の上に。

鍵とか、封筒とか、金属の冷たい手錠とか、そういう小物と同じ重さで「共犯」が置かれてしまう感じがある。概念じゃなくて、触ったら指紋がつきそうな物体として。

共犯ボイス試聴動画:
動画タイトルは「【試聴動画】『共犯ボイス -魁星編&渡会雲雀編-』」
にじさんじ公式YouTubeチャンネルで公開されている

告知の大きさより先に、まず「距離」のほうにやられた。

こういうボイス企画って、もちろん声を聴くものなのだけど、今回の試聴は声そのものよりも、声がこちらの生活圏に侵入してくる手つきが妙に残る。

画面の向こうで誰かが喋っている、という安全な距離感ではない。

椅子の背もたれに体重を預けた瞬間、すぐ横から声が落ちてくる。机に肘をついたら、置きっぱなしの封筒の角が少し曲がっていて、その横に知らない鍵がある。耳の奥だけが、先に部屋から連れ出される。

そういう距離の詰め方。

「共犯」という言葉は、普通ならストーリーの設定を説明するために働く。だけどここでは、説明として先に来ない。むしろ、声を聴いたあとに「あ、今の距離が共犯だったのか」と遅れてわかる。

この順番が怖い。

先に意味を渡されるのではなく、先に空気を吸わされる。息の近さ、言葉の間、少しだけ低くなる温度、こちらの返事を待っているようで待っていない沈黙。その全部が積み重なったあとで、「共犯」という単語が、ポケットの中の硬貨みたいに指先へ当たる。

公開されている試聴内容:
魁星編と渡会雲雀編の試聴動画
YouTube動画IDは「yz_QbsN9QY0」

「共犯」は甘い言葉じゃなくて、逃げ道の狭い言葉だった

共犯、という言葉には甘さがある。

ふたりだけの秘密。誰にも言えない関係。夜にだけ通じる合図。そういう、いかにもボイスコンテンツと相性のいい匂いがある。

でも、この試聴で残るのは、単純な甘さだけじゃない。

むしろ「逃げ道の狭さ」みたいなものがある。

恋愛の言葉なら、まだ受け手は少し余裕を持てる。好き、会いたい、そばにいて。そういう言葉は強いけれど、受け取る側にも感情の置き場所がある。

でも「共犯」は違う。

それは、こちらも何かをしたことにされる言葉だ。

聴いているだけなのに、ただ椅子に座って再生ボタンを押しただけなのに、いつの間にか同じ封筒を持たされている。知らない鍵を握らされている。机の引き出しの奥に、開けてはいけない何かをしまったことにされている。

この「巻き込まれ方」が、かなりにじさんじのボイスとして強い。

キャラクターがこちらへ近づく、というより、こちらの足元の床板が一枚ずつ剥がされていく感じ。逃げようと思えば逃げられるのに、なぜか椅子から立たない。立てないのではなく、立たない。その微妙な選択の気持ち悪さと気持ちよさが、「共犯」という言葉にある。

魁星編と渡会雲雀編、声の“座る位置”が違う

試聴という短い範囲でも、魁星編と渡会雲雀編では、声が座っている位置が違うように感じる。

声は音なのに、なぜか家具の配置みたいに感じる瞬間がある。

すぐ隣の椅子にいる声。

机を挟んで正面にいる声。

背後に立っているわけではないのに、こちらの肩のあたりに気配が残る声。

その位置の違いで、「共犯」の質感が変わる。

同じ秘密を持つにしても、肩を並べて同じ方向を見る共犯と、向かい合って互いの表情を読み合う共犯では、息の仕方が違う。前者には並走する危うさがあり、後者には尋問室みたいな静けさがある。

この企画のおもしろいところは、たぶん「共犯」という同じ箱を用意しておきながら、その中に入る声の角度でまったく別の部屋になるところだと思う。

ドアの色も、照明の暗さも、机の傷も、置かれている小物も違う。

でも、どの部屋にもひとつだけ共通しているものがある。

秘密を捨てるためのゴミ箱がない。

耳は、意外と簡単に共犯になる

目で見るコンテンツは、まだ少し抵抗できる。

視線を外せる。スマホを伏せられる。画面を閉じられる。もちろん耳だってイヤホンを外せばいいのだけど、声は一度入ると、画面よりもしぶとい。

特にボイスの怖さは、耳の奥に残ることではなく、耳の奥から生活音へ戻ってくることだと思う。

再生を止めたあと、部屋の空調が鳴る。キーボードを叩く。マグカップを置く。そういう普通の音の隙間に、さっきの声の距離だけが残っている。

音声コンテンツは、映像よりも小さいふりをして、実はかなり図々しい。

こちらの部屋を背景にしてしまうから。

にじさんじの「共犯ボイス」という名前を見たとき、最初はもっと物語側の企画名として受け取っていた。なるほど、そういう設定なのね、と。でも試聴を聴くと、その油断が少し恥ずかしくなる。

設定じゃなかった。

これは、耳の位置を変える企画名だった。

にじさんじ公式X告知:
魁星編、渡会雲雀編の試聴動画公開が告知されている
告知内では、シスター・クレア編と小清水透編を翌日公開予定としている

明日公開予定の名前まで、もう少し不穏に見えてくる

告知には、明日はシスター・クレア編、小清水透編を公開予定ともある。

この一文、本来なら追加情報としてさらっと流せるはずなのに、今回に限っては妙にざわつく。

「共犯」という箱が先に置かれてしまったせいで、次に誰の声が入ってくるのかを考えるだけで、部屋の空気が少し変わる。

シスター・クレア編なら、その言葉はどんな罪悪感を帯びるのか。

小清水透編なら、どんな温度で秘密が差し出されるのか。

まだ聴いていないものに対して、すでに耳が勝手に姿勢を正している。怖い。いや、怖いというより、ずるい。

ボイス企画の「次がある」という情報は、ただの予定で終わらない。今日聴いた声が、明日の声のために耳を調律してしまう。いったん近づかれた距離は、なかなか元に戻らない。

ボイスは、こちらの“何もしてなさ”を奪ってくる

私はこういう企画に触れるたび、ボイスってかなり変なメディアだなと思う。

こちらは何もしていない。

ただ聴いているだけ。

画面の前で、椅子に座って、たぶん少し猫背で、スマホかPCのスピーカーかイヤホン越しに音を受け取っているだけ。

なのに、ボイスはその「何もしていない」を許してくれない。

息を潜めたら、隠れていることになる。

黙って聴いていたら、同意したみたいになる。

少し笑ったら、秘密を楽しんでいるみたいになる。

目を閉じたら、もう完全にこちらの負けだ。

「共犯ボイス」という名前は、その仕組みをかなり正直に言っている気がする。受け手をただの観客にしておかない。聴くという行為そのものを、物語の片側へ寄せてくる。

耳は受動的な器官のふりをしているけれど、実際にはかなり簡単に署名してしまう。

何かの契約書に。

封筒の中身を知らないまま、机の端に置かれたペンを取ってしまう。

残るのは、言葉ではなく小物の重さ

試聴を聴き終えて残るのは、セリフの意味そのものだけではない。

むしろ、もっと物っぽいものが残る。

机に置かれた鍵。

開ける前の封筒。

引き出しの中でかすかに鳴る金属。

座り直した椅子の軋み。

イヤホンを外したあとも、耳の奥にある小さな部屋。

「共犯」という言葉は、危うい関係性を説明するためのタイトルではなく、そういう物たちの間に置かれた札みたいに見えてくる。

そして、その札を見たこちらはもう、何も知らなかった顔ができない。

再生ボタンを押す前の耳には戻れない、というほど大げさに言うつもりはない。でも少なくとも、さっきまで何でもなかった机の上に、余計な影がひとつ増える。

鍵はまだ開いていない。

封筒もまだ破られていない。

でも、そこに置かれていることだけは、もう知ってしまった。

参考ソース

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る