乾いた地表と、遠すぎる宇宙。
『楽園追放』を思い出すとき、画面の奥にあるのはだいたいこの二つだ。
砂ぼこりのざらつきと、電脳世界ディーヴァの青白い清潔さ。
そのあいだに、アンジェラの身体と、ディンゴの声と、アーハンの重たい装甲が置かれていた。
そこへ『楽園追放 -The Stellar Angel-』が来る。
劇場アニメ『楽園追放 -Expelled from Paradise-』の後日譚を描く新作ビジュアルノベル。
Nintendo SwitchとSteamで、2026年冬発売予定。
文字にすると、情報はわりと少ない。
少ないのに、やけに手元へ寄ってくる。
たぶん引っかかっているのは、「後日譚」そのものではない。
あの作品の“その後”を、もう一度スクリーンの速度で見せるのではなく、テキストと演出で紡ぐビジュアルノベルとして出す、という選び方だ。
肉体を捨てた人類の物語が、今度はプレイヤーの指で進む。
そこが、かなり『楽園追放』っぽい。
「後日譚」という言葉が、ただの続編紹介で終わらない
『楽園追放 -The Stellar Angel-』について、いま確定している輪郭はまだ細い。
2026年5月15日に公式ティザーサイトが公開され、ジャンルはビジュアルノベル、対応プラットフォームはNintendo SwitchとSteam、発売時期は2026年冬予定。
価格や年齢区分は未定。
ストーリーや登場キャラクター、スタッフなどの詳細も、今後段階的に出てくる。
『楽園追放 -The Stellar Angel-』:
劇場アニメーション『楽園追放 -Expelled from Paradise-』の後日譚を描く完全新作ビジュアルノベル
公式ティザーサイト公開日:2026年5月15日
対応プラットフォーム:Nintendo Switch/Steam
発売時期:2026年冬予定
対応言語:日本語/英語
価格・年齢区分:未定
企画:東映アニメーション株式会社
開発:Studio51株式会社
【新作ゲーム情報】
『楽園追放-Expelled from Paradise-』の新作ゲーム『楽園追放 -The Stellar Angel-』を2026年冬、Nintendo Switch/Steamにて発売決定!本日ティザーサイト公開📷
📷 https://t.co/WcH0uYMQyG#楽園追放 #TheStellarAngel pic.twitter.com/Z80vRLjWtH— 「楽園追放」公式 (@efp_official) May 15, 2026
この一行が、2026年冬へ向かう発射音になった。
ただ、「後日譚」と書かれるとき、ふつうは少し安心してしまう。
終わった物語のあとを、もう少しだけ見られる。
あの人たちがどうしているのか、あの世界がどう変わったのか、ふたたび覗ける。
もちろんそれも大きい。
でも『楽園追放』でその言葉を使うと、もう少し面倒な温度になる。
あの作品は、場所の話だった。
楽園と呼ばれる電脳世界。
荒廃した地上。
肉体を捨てることと、肉体を持って歩くこと。
人間をデータとして扱う場所と、砂と風と食事と故障がある場所。
その境目にアンジェラが降りてきたから、物語が動いた。
だから“その後”という言葉は、単なる時間の続きではない。
どこに立つのか、どの身体で生きるのか、どの端末から世界を見るのか、という問いの続きになる。
ビジュアルノベルは、楽園追放と相性が悪そうで、よすぎる
最初に「ビジュアルノベル」と聞いたとき、少し意外でもあった。
『楽園追放』は、フル3DCGの身体性とアクションの印象が強い。
アーハンが動き、銃火が走り、荒れた地表を機体が踏む。
ならばゲーム化も、派手なアクションや探索を思い浮かべたくなる。
そこを、テキストと演出で紡ぐビジュアルノベルとして置く。
ギアを下げたように見えて、実は作品の芯へ寄っている感じがある。
『楽園追放 -Expelled from Paradise-』:
2014年11月15日公開の劇場アニメーション
監督:水島精二
脚本:虚淵玄(ニトロプラス)
西暦2400年、電脳世界ディーヴァと荒廃した地上を舞台に描かれるSF作品
新作ゲームでは、アンジェラとディンゴの物語がふたたび動き出すとされている
ビジュアルノベルは、クリックやボタン入力のたびに文章が現れる。
画面は派手に爆ぜないかもしれない。
けれど、読んで、止まって、次の一文へ進む。
その小さな動作が、かなり身体的だ。
肉体を捨てた人類の物語を、プレイヤーの指先で進める。
端末の前にいるこちらの身体が、急に無関係ではなくなる。
映画のアクションは、速度で思想を見せる。
機体が飛ぶ。
弾が走る。
カメラが抜ける。
けれど、後日譚に必要なのは、速度だけではないかもしれない。
アンジェラとディンゴのあいだに残ったものを、会話の間、改行、沈黙、選択肢の手前に置く。
そういう小さな摩擦を積むなら、ビジュアルノベルはむしろ危ない。
派手な武装よりも、一行の間のほうが逃げ場をなくすことがある。
「壮大なSF的ビジョンをテキストと演出で紡ぐ」という説明も、なかなか強い。
壮大さを、ムービーの尺や戦闘の規模だけに預けないと言っているように見えるからだ。
宇宙の大きさを、文字送りの小ささに押し込める。
青いディーヴァの清潔さも、地上の砂ぼこりも、たぶん文章の呼吸で触らせにくる。
そのサイズ差がいい。
星とカーソル。
遠さと指先。
たぶん両方いる。
SwitchとSteam、二つの端末がちょうど怖い
対応プラットフォームがNintendo SwitchとSteamというのも、単なる販売面の話で終わらせたくない。
Switchはテレビにも手元にも置ける。
SteamはPCの画面で開く。
どちらも、プレイヤーの生活の中にある端末だ。
『楽園追放』の物語にとって、「端末で世界へ接続する」という感覚はかなり近い場所にある。
もちろん、ディーヴァそのものを再現するわけではない。
けれど、こちらが手に持つSwitchの画面や、机の上のPCモニターに“楽園の外側”が表示されるのは、妙に生々しい。
プレイヤーは椅子に座っている。
布団に寝転がっているかもしれない。
電車の中で起動する人もいるかもしれない。
その日常の端末へ、アンジェラとディンゴの“その後”が降りてくる。
日本語と英語に対応する予定であることも、静かに効いている。
『楽園追放』は、そもそも地球と宇宙、肉体とデータ、内側と外側の境界を扱ってきた作品だ。
そこへ複数言語の入口が用意される。
言葉が変わっても、画面の向こうでカーソルが点滅する。
地上の砂の色や、宇宙の冷たさや、誰かの名前を呼ぶ声が、別の言語でも読み進められる。
これは大げさなグローバル礼賛ではなく、作品の境界線がもう一枚増える感じに近い。
そして、携帯できることは軽さではない。
むしろ重い。
スクリーンで一度浴びた物語を、今度は自分の手元へ持ち帰ることになるからだ。
アーハンの装甲や宇宙船のスケールは小さな画面に収まる。
でも、そのぶん一文の圧が近くなる。
大画面で遠くを見るのではなく、手の中で近く読む。
『The Stellar Angel』という副題の星の遠さと、ゲーム機の距離の近さが、変な角度でぶつかっている。
映画『心のレゾナンス』の横で、ゲームは別の回路を持つ
2026年には、劇場アニメ『楽園追放 心のレゾナンス』も控えている。
公式サイトでは2026年11月13日公開とされ、水島精二監督、脚本の虚淵玄(ニトロプラス)、キャラクターデザインの齋藤将嗣、音楽のNARASAKIらメインスタッフの再集結も示されている。
映画とゲームの双方から『楽園追放』の世界を体験できる展開、という大きな流れがある。
ここで大事なのは、ゲームが映画の“おまけ”にならないことだと思う。
少なくとも、いま出ている情報の置き方を見るかぎり、『The Stellar Angel』はアンジェラとディンゴの物語がふたたび動き出すビジュアルノベルとして立っている。
映画には映画の速度がある。
新しいキャラクター、新しい事件、新しい画面の圧があるはずだ。
でも、ゲームにはゲームの間がある。
映画は、観客の呼吸をある程度連れていく。
カットが進み、音楽が鳴り、次の場面へ運ばれる。
ビジュアルノベルは、そこで一度止まれる。
止まってしまう。
読み終えた一文の先に、次を押すかどうかの小さな空白がある。
この空白が、『楽園追放』の後日譚には合っている気がする。
すぐに答えを出すより、地上の風に少し立たされるほうが似合う。
アンジェラとディンゴの“その後”という言い方には、どうしても距離がある。
近くで見たい。
でも、見てしまうのが少し怖い。
あの関係を、便利な続編の餌として消費されたくない気持ちもある。
だからこそ、ビジュアルノベルという形式には期待してしまう。
派手な正解を急がず、会話の角、沈黙の重さ、選ばなかった言葉の影まで置けるなら、後日譚はちゃんと地上に足をつけられる。
冬まで、未定の空白ごと待ちたい
現時点では、価格も年齢区分も未定。
詳細なストーリーや登場キャラクター、スタッフ情報もこれからだ。
ゲームシステムの細部に踏み込むには材料が足りないし、どの程度の選択肢があるのか、どんな演出になるのかもまだ言えない。
ここを勝手に埋めると、せっかくの空白が軽くなる。
でも、その未定の空白が悪くない。
ティザーサイトの短い情報欄は、まだ開ききっていないハッチみたいに見える。
タイトル、ジャンル、対応プラットフォーム、発売日、価格未定。
必要な文字だけが並び、奥の区画にはまだ明かりがついていない。
そこにアンジェラとディンゴの名前があるだけで、少し手が止まる。
『楽園追放』は、清潔な楽園から荒れた地上へ降りる話だった。
『The Stellar Angel』は、その後日譚を、今度はこちらの端末へ降ろしてくる。
スクリーンの向こうで完結したものを、Switchの小さな画面やSteamのウィンドウで、ひとつずつ読む。
たぶん冬になったら、起動音のあとに最初のテキストが出る。
その一文を送る指先に、砂ぼこりと星の冷たい光が少しだけ乗る。