黒みつの艶にミルキーの白が沈む。不二家×榮太樓のミルキーティラミスケーキを断面で読む

黒みつの艶にミルキーの白が沈む。不二家×榮太樓のミルキーティラミスケーキを断面で読む

商品名を読むだけで、皿の上が少し狭くなる。
「日本橋榮太樓の黒みつ使用 ミルキーティラミスケーキ」。
黒みつ、ミルキー、ティラミス、ケーキ。
そこへさらに、わらび餅クリームまで入ってくる。
甘さの種類が多いのに、全部が同じ方向を向いていない感じがある。

不二家洋菓子店の丸いカットケーキに、日本橋榮太樓の黒みつが使われる。
しかも、ミルキー75周年記念と、6月16日の和菓子の日に合わせた企画として出てくる。
発売日は2026年6月12日。
和菓子の日そのものより少し前に、黒い艶と白い甘さが店頭の季節へ先に置かれる形だ。

ここで気になるのは、和と洋の組み合わせの珍しさよりも、その詰め方である。
直径80mm、高さ50mmという小さな丸の中に、黒みつシロップ、ミルキーティラミスクリーム、わらび餅クリーム、カラメル黒みつグラサージュが積まれている。
名前は賑やかなのに、見えてくるのは案外、黒と白の距離の近さだった。

黒みつが、上からではなく層の中へ入ってくる

黒みつのケーキというと、上にかかる黒い蜜をまず想像しやすい。
表面に艶があり、スプーンやフォークの先で少し光を返す、あの濃い甘さである。
けれど、この「日本橋榮太樓の黒みつ使用 ミルキーティラミスケーキ」で面白いのは、黒みつが表面の飾りだけに留まっていないところだ。
黒みつシロップと、カラメル黒みつグラサージュ。
底へ染みる役目と、表面を覆う役目の両方に黒みつがいる。

つまり黒みつは、ケーキの外側で「和」の印をつけるための素材ではなく、断面の上下をつなぐ液体として置かれている。
フォークを入れる前から、シロップの黒さは生地の奥へ沈み、グラサージュの艶は上で待っている。
この上下の配置があるだけで、甘さの想像はかなり変わる。
香ばしさが先に来るのか、乳の白さが先にほどけるのか、まだ食べていなくても舌が勝手に順番を組み始める。

日本橋榮太樓の黒みつ使用 ミルキーティラミスケーキ:
不二家洋菓子店で2026年6月12日(金)より順次発売された、榮太樓總本鋪監修のカットケーキ。
税込691円、直径80×高さ50mm。
黒みつシロップ、ミルキーティラミスクリーム、わらび餅クリーム、カラメル黒みつグラサージュで構成される。

ティラミスという言葉も、ここでは少し不思議な働きをしている。
ティラミスは本来、層の菓子だ。
クリーム、生地、染み込む液体、上面の苦みや粉っぽさ。
その構造の中へ、ミルキーの甘さと黒みつの艶が入る。
名前だけなら足し算に見えるが、実際に公式情報から見えるのは、層を使って甘さを分けている設計だ。

黒みつの濃さを、ミルキーの白いクリームが受け止める。
そこにカラメル黒みつグラサージュという、少し焦げた方向の黒さが重なる。
「黒みつ」と「カラメル黒みつ」が別の位置に書かれているだけで、同じ黒でも、舌の上で一枚では済まない気配が出る。
このケーキは、黒みつを一点に置くのではなく、断面の時間に分けて置いている。

ミルキーの白い甘さは、主役というより受け皿に見える

ミルキー75周年記念という文脈がある以上、ミルキーは当然このケーキの中心にいる。
ただ、ここでのミルキーは、前へ出て旗を振る主役というより、黒みつやわらび餅クリームを受ける白い皿のように見える。
ミルキーティラミスクリームという名前は、ミルキーをそのままケーキの上へ置いたというより、ティラミスの層へ練り込んだ感じが強い。

ミルキーの甘さには、包装紙を開けた瞬間の白さがある。
硬い飴でも、やわらかい乳の印象が先に来る。
それがティラミスクリームになると、包み紙の中にあった白い甘さが、皿の上で少し湿度を持つ。
黒みつの光を反射するのではなく、いったん抱え込むような白さだ。

この組み合わせで避けたいのは、和菓子と洋菓子が握手しました、という平らな見方で終わることだと思う。
ミルキーの白は、子どもの頃の記憶へすぐ接続できる甘さであり、黒みつはもう少し暗く、底に沈む甘さである。
同じ甘いものでも、時間帯が違う。
ミルキーは昼の紙包み、黒みつは夕方の小皿に近い。
その二つがティラミスという層の中で隣り合うから、甘さの明るさと暗さが同時に見えてくる。

不二家×榮太樓總本鋪のコラボ:
不二家洋菓子店と日本橋の老舗和菓子店・榮太樓總本鋪によるコラボ企画。
6月16日の和菓子の日に合わせた企画として展開。
2026年に発売75周年を迎えたミルキーを記念した和洋折衷スイーツとして案内されている。

榮太樓總本鋪の黒みつが入ることで、ミルキーの白さは逆に輪郭を得る。
白いものは、白だけで置かれるとふくらみすぎる。
そこへ黒い艶が来ると、乳の甘さに縁ができる。
甘い、なめらか、やさしい、といった便利な言葉へ逃がす前に、白と黒の境目が見える。
この境目こそ、この小さなケーキの見どころだと思う。

わらび餅クリームが、断面に「噛む前の間」を作る

構成の中で、いちばん妙な存在感を持っているのは、わらび餅クリームかもしれない。
黒みつとミルキー、ティラミスまでは、甘さの方向としてまだ想像の線を引ける。
けれど、わらび餅クリームが入った瞬間に、舌だけでなく歯のことを考えてしまう。
なめらかなクリームの中に、和菓子のぷるんとした記憶が差し込まれるからだ。

もちろん、ここで実際の食感を決めつけることはできない。
けれど、素材名として「わらび餅クリーム」と書かれているだけで、ケーキの速度は少し遅くなる。
ティラミスはフォークで崩れて、クリームと生地が舌へなだれ込む菓子である。
そこにわらび餅の名が入ると、すぐに溶けるだけでは終わらない気配が生まれる。

この「間」が大事だ。
黒みつシロップは染みる。
ミルキーティラミスクリームは広がる。
カラメル黒みつグラサージュは表面で艶を作る。
その中で、わらび餅クリームは、断面に小さな抵抗を置く。
甘さが流れすぎないように、丸いケーキの中央で一拍だけ身体を持たせる。

和菓子らしさは、必ずしも抹茶や小豆のような分かりやすい色で来る必要はない。
黒みつの艶と、わらび餅の名前が連れてくる弾力だけで、皿の上に和菓子の時間は十分に立ち上がる。
そこへミルキーの乳感が重なると、昔ながらの甘さ同士がぶつかるのではなく、別々の棚から出てきた菓子がひとつの断面に並ぶ。
老舗の黒みつと、包み紙の白い甘さ。
距離のある二つが、クリームの中でかなり近いところまで寄っている。

発売日と和菓子の日のずれが、季節の余白を作っている

この商品は2026年6月12日から順次発売される。
そして、企画の文脈にある和菓子の日は6月16日である。
ここは混同したくない。
12日に店頭へ出て、16日の和菓子の日へ向かっていく。
その数日のずれが、妙にいい。

記念日ぴったりに合わせるのではなく、少し前から皿の上に準備される。
梅雨時のケーキ売り場に、黒みつの艶が先に置かれる。
白いミルキーの甘さは、明るい記念日の顔をしているのに、黒みつと並ぶことで少し陰影を持つ。
6月の湿った空気に、カラメル黒みつグラサージュという言葉がよく似合う。
さらっとした初夏ではなく、少し重く、光が表面で止まる季節の甘さだ。

発売・販売上の注意:
発売日は2026年6月12日(金)より順次発売。
店舗により取り扱い、発売時期、価格、内容、デザインが異なる場合がある。
全国すべての店舗で必ず購入できる商品としては扱わない。

ミルキー75周年という時間の長さも、このケーキでは派手な記念ロゴより、白いクリームの側に出ているように感じる。
長く続いた甘さは、単体で記念商品になると懐かしさへ寄りやすい。
そこへ榮太樓總本鋪の黒みつを合わせることで、懐かしさが一方向へ流れない。
子どもの包み紙と、日本橋の黒い蜜が、同じケーキの中で別々の来歴を持ったまま置かれている。

その意味で、このケーキは発売日の数字より、6月の数日間の幅で眺めたくなる。
12日に始まり、16日の和菓子の日へ近づき、店ごとの取り扱い差を含みながら、ショーケースの中で小さく丸く並ぶ可能性がある。
買えるかどうか、どの店舗にあるかは確認が必要だとしても、企画としての狙いはかなりはっきりしている。
和菓子の日を、和菓子そのものだけでなく、洋菓子の断面からも見せようとしている。

小さな丸の中で、甘さが渋滞せずに層になる

直径80mm、高さ50mmというサイズは、数字で見ると小さい。
けれど、その中へ入っている言葉は多い。
日本橋榮太樓、黒みつ、ミルキー、ティラミス、わらび餅、カラメル、グラサージュ。
看板を並べればかなり混み合う。
それでも、この商品に過密さだけを感じないのは、言葉がそれぞれ別の場所を持っているからだ。

黒みつはシロップとグラサージュに分かれ、ミルキーはティラミスクリームに入り、わらび餅はクリームとして中へ置かれる。
名前の圧は強いのに、構成を見ると役割がきちんと分かれている。
上面の艶、内側の白、途中のやわらかな抵抗、底へ染みる黒。
皿の上で一気に名乗るのではなく、フォークが進む順番に合わせて名札を出してくるような作りだ。

食べた感想として語ることはできない。
ただ、公式情報に並ぶ素材名だけで、断面の想像はかなり具体的になる。
黒い表面にフォークの先が入り、白いクリームが見え、わらび餅クリームという名前が舌より先に歯へ届く。
その奥で、黒みつシロップが底の甘さを支えている。
小さな丸いケーキなのに、甘さが一枚の布ではなく、何枚かの薄い層として重なっている。

このコラボのいちばん好きなところは、和洋折衷という便利な札を貼る前に、黒みつの艶とミルキーの白さがちゃんと別々の顔をしていることだ。
同じ甘さの仲間に見えて、片方は光を吸い、片方は光をやわらかく返す。
そこへティラミスの層が入り、わらび餅クリームが一拍置く。
帰り道の箱の中で揺れるとしたら、まず思い浮かぶのは派手な記念感ではなく、黒い艶の下に白いクリームが隠れている、あの小さな丸の重さである。

参考ソース

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