池袋の棚に並ぶ絵本の記憶、Cake.jpのクッキー缶が残すもの

池袋の棚に並ぶ絵本の記憶、Cake.jpのクッキー缶が残すもの

缶という形になると、絵本の記憶は本棚から食卓へ少し移動する。
ページをめくる指先ではなく、ふたを開ける手、焼き菓子を皿へ移す手、食べ終えたあとに空いた缶を机の端へ置く手が、同じ物語を別の角度から触る。

2026年6月13日から7月5日まで、池袋サンシャインシティアルタ1Fイベントスペースで「名作絵本のクッキー缶セレクション by Cake.jp」が期間限定で開かれる。
Cake.jpの案内では、絵本コラボのオリジナルクッキー缶シリーズ約18種類が販売予定とされている。

引っかかるのは、個々の絵柄のかわいさより、ノンタン、ねないこだれだ、はらぺこあおむし、パンどろぼう、おさるのジョージのように、世代の違う懐かしさが同じ催事棚の高さへ揃うことだ。
親の本棚、子どもの膝、保育園の午睡前、書店の絵本台にあった名前が、今度は缶のふたと焼き菓子の匂いへ寄ってくる。

絵本が缶になると、記憶の置き場所が変わる

「名作絵本のクッキー缶セレクション by Cake.jp」の面白さは、絵本を読む時間と、お菓子を分ける時間が同じ缶の中で重なるところにある。
絵本はふつう、ページの順番に沿って進む。
けれどクッキー缶は、ふたを開けた瞬間に絵柄、菓子、包み、手元の影が同時に目に入る。
順番を守って読み進める本とは違い、缶の中では好きな一枚から手が伸びる。

「名作絵本のクッキー缶セレクション by Cake.jp」:
Cake.jpと複数の絵本作品がコラボしたオリジナルクッキー缶を扱うポップアップストア。
池袋サンシャインシティアルタでの会期は2026年6月13日(土)から7月5日(日)まで。
販売予定は絵本コラボのオリジナルクッキー缶シリーズ約18種類。

子どものころの絵本は、読み聞かせの声や、布団の端、紙の角の丸まり方と結びついて残ることが多い。
それが缶になると、記憶は「読んだ本」から「置いてある物」へ姿を変える。
棚から出して開き直すのではなく、机や台所や引き出しの上で、毎日の用事の近くに残る。
本棚で眠っていた名前が、菓子皿の横へ出てくるような移動がある。

紙の絵本は閉じると背表紙になるが、缶は閉じたあとも面で見える。
ふたの平らな面、角の丸み、手に持ったときの冷たさが、読む行為とは違う入口を作る。
物語の筋を思い出せなくても、缶の色や輪郭が先に戻ってくることがある。
そこでは内容の記憶より先に、手が覚えている重さが働く。

Cake.jpの絵本コラボクッキー缶は、クッキーを食べたあとに缶を小物入れとして再利用できる特徴も示されている。
ここで、今回の企画がぐっと物になる。
焼き菓子は減っていくのに、缶だけは手元に残り、クリップ、切手、鍵、イヤホンの替えゴムのような小さな物を受け持ち始める。
空になった瞬間から、缶は絵本の余韻をしまう入れ物になる。

池袋の催事棚に、世代の違う懐かしさが並ぶ

今回確認できる作品例はかなり幅が広い。
ノンタン、シナぷしゅ、おまえうまそうだな、ねないこだれだ、ノラネコぐんだん、ねずみくん、くまのがっこう、こんとあき、ぞうくんのさんぽ、はらぺこあおむし、パディントン、メロとタビ、きかんしゃトーマス、リサとガスパール、パンどろぼう、りんごかもしれない、おさるのジョージ、しましまぐるぐるなどが挙げられている。
ひとつの年齢層へ一直線に向かうというより、別々の時代に読まれてきた名前が、同じ缶の面積へ収まっていく。
大人が先に知っている絵本と、子どもの生活に近い絵本が、同じ売り場の文法で並ぶところに、棚の強さがある。

Cake.jp:
ケーキ・スイーツ専門通販サイトを運営する企業/サービス。
今回のポップアップストアの主催・販売元。
Cake.jpの会社案内では、2017年1月よりサービスを運営し、会員数200万人、加盟店舗数1,700店舗以上、8,000種類のラインアップを扱うと説明されている。

この並びは、懐かしさを年表にしない。
昔からある絵本、比較的新しい家庭の記憶に近い作品、海外から来たキャラクター、保育の場で何度も見た表紙の感覚が、同じ棚で肩を並べる。
どれか一作を深掘りするより、複数の入口が横に置かれることで、自分の年齢では説明しきれない懐かしさが出てくる。
自分が読んだ絵本と、読んでいないのに知っている絵本の境目も、そこで少し曖昧になる。

同じ棚に並ぶということは、記憶の大きさをいったん揃えることでもある。
大きな絵本、小さなボードブック、家にあった本、図書館で借りた本、誰かに読んでもらった本が、催事の場では缶の寸法として近づく。
本棚では離れていた作品同士が、焼き菓子の箱として隣り合うところに、この企画の引っかかりがある。
缶の規格は、ばらばらだった記憶を一度同じ高さに置く装置にも見える。

Cake.jpの発表では、このポップアップストアは過去にJR東日本東京駅構内のグランスタ東京や全国50か所以上で開催されてきたものとして案内されている。
池袋サンシャインシティアルタ1Fイベントスペースでの開催は、2026年6月13日から始まる。
東京駅や各地を渡ってきた催事棚が、今度は池袋の商業施設の1階に置かれるという移動の感覚も、この企画に少し合っている。
絵本そのものも、家、園、学校、図書館を移動しながら読まれるものだからだ。

焼き菓子が減ったあと、缶は手元で役目を変える

クッキー缶は、食べる前と食べた後で重さが変わる。
最初は焼き菓子の重さがあり、ふたを開けるたびに「今日はどれにしようか」という小さな選択がある。
最後の一枚が皿へ移ると、缶の中は急に軽くなり、底の色や角の深さが見える。
食べものの入れ物だったものが、空気の入った箱へ切り替わる瞬間だ。

絵本コラボクッキー缶:
絵本作品の世界観を缶やクッキーに落とし込んだ焼き菓子商品群。
確認できる作品例は、ノンタン、はらぺこあおむし、パンどろぼう、ねないこだれだ、ノラネコぐんだんなど。
クッキーは小麦・卵・乳不使用と案内されているが、医療的な安全保証ではない。
食後の缶は小物入れとして再利用できる特徴が示されている。

焼き菓子は、包装をほどく手順まで含めて記憶に残りやすい。
紙を開く音、皿に置くときの乾いた感触、指先につく細かな粉は、絵本のページとはまったく別の身体感覚を呼ぶ。
同じキャラクターや作品名に触れているのに、入口が目だけで終わらない。
読む記憶に、食べる速度と手の温度が加わる。

その軽くなった缶を捨てずに残すと、絵本の記憶は消費のあとへ回り込む。
机の上では輪ゴムや付箋を受け止めるかもしれないし、玄関では鍵や小銭を入れる器になるかもしれない。
中身が変わっても、ふたを閉める音は同じで、絵本の名前が毎日の動作に混ざっていく。
使い道が決まった途端、缶は土産物から生活の道具へ移る。

小麦・卵・乳不使用という特徴も、Cake.jpの案内で確認できる。
ただ、その表示は商品特徴のひとつとして受け止めるのがよい。
食物アレルギーや原材料の確認が必要な場合は、最新の表示、製造環境、注意事項まで見る前提で、缶の見た目に判断を預けないほうがいい。
かわいい缶ほど、食べる前の確認を雑にしない距離感が必要になる。

価格の前に、棚の並びを見たい

今回の催事を、価格や購入手順の確認だけで終わらせると、少し惜しい。
約18種類という数は、品番の多さではなく、記憶の入口が横に増える数として見たい。
誰かの一冊が、別の誰かには初めて聞く名前で、その差が同じ缶の高さに揃う。
選ぶ前の迷いそのものが、複数の絵本を同時に見る体験になる。

商品一覧があると、つい「どれを選ぶか」に気持ちが走る。
もちろん、好きな作品の缶を手に取る楽しさは大きい。
それでもこの企画の面白さは、選ぶ前の数秒、棚を左から右へ眺める時間にある。
名前の読める絵本、読んだ覚えが曖昧な絵本、誰かに贈ると顔が浮かびそうな絵本が、缶の平面として並ぶ。
その視線の移動に、催事棚ならではの短い編集がある。

価格は必要な情報だし、会場へ行くなら会期や営業時間も欠かせない。
それでも、まず残したいのは買い方の手順ではなく、作品名が缶のふたに乗ったときの距離の変化だ。
読むための名前だったものが、手土産として渡せる名前になり、台所で開けられる名前になる。
絵本の名前が、会計前の札ではなく、帰宅後の置き場所まで伸びていく。

全商品が常に揃うことや、特定の缶がいつでも買えることまでは、確認できる情報からは言い切らない。
ラインアップは変更される場合があるという前提を置いたまま、会期、営業時間、会場、商品一覧の確認へ進むほうが、この種のポップアップには合っている。
急かす言葉より、まず缶の名前を一つずつ読む手つきのほうが、今回の企画には似合う。
欲しい缶を決める前に、並んだ名前の密度を受け取る時間があっていい。

帰り道に残るのは、缶の角とふたの音

会場は池袋サンシャインシティアルタ1Fイベントスペース、会期は2026年6月13日から7月5日まで、営業時間は11:00-20:00と案内されている。
この情報は用事のための骨組みだが、ここで残したいのは、その数字のあいだにある手元の時間だ。
昼に選ぶ缶、夕方に鞄へ入れる缶、家で開けて皿へ並べる焼き菓子、そのあと空いた缶へ何を入れるかを迷う時間。
イベントの会期が終わったあとも、缶の中身を入れ替える日は続いていく。

池袋サンシャインシティアルタ1Fイベントスペース:
今回の開催場所。
会期中の営業時間は11:00-20:00。
住所と会期、営業時間はCake.jpの告知記事および発表資料で確認できる。
会場側の個別催事告知は調査時点で明確に確認できていないため、会場情報はCake.jp側の案内を根拠に扱う。

絵本は読んでいる間、ページの外へ音を出さない。
けれど缶は、ふたを開けるときに小さく鳴り、閉めるときにも鳴る。
池袋の催事棚に並ぶ絵本の名前は、焼き菓子がなくなったあとも、引き出しの中で金属の角を見せながら残っていく。
次にその缶を開ける手は、クッキーではなく、しまっておいた小さな物を探しているかもしれない。

参考ソース

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